「利回り7%超え」の魅力に潜む落とし穴
不動産投資の物件情報を眺めていると、「表面利回り7%」「高利回り物件」といった文言が目に飛び込んでくる。銀行預金の金利が0.1%にも満たない時代に、7%という数字は非常に魅力的に映る。しかし、この「表面利回り」という指標には、実際の収益を大きく左右する経費が一切含まれていない。
表面利回りだけを信じて物件を購入し、想定外の出費に苦しむ投資家は少なくない。この記事では、実際に表面利回り7.8%の物件を購入して実質利回り2.6%まで落ち込んだ事例を紹介しながら、見落としがちな5つの経費と正しい利回り計算の方法を解説する。
表面利回り7.8%が実質2.6%に急落した実例
ある初心者投資家は、駅から徒歩20分・築8年の区分マンションを1,000万円で購入した。年間家賃収入は78万円で、表面利回りは7.8%。不動産ポータルサイトで見つけた「高利回り物件」に心を動かされ、ほぼ即決で購入を決めた。
しかし、購入からわずか半年後に入居者が退去。引越しの閑散期と重なったこともあり、次の入居者が決まるまで7ヶ月もの空室が続いた。その間のローン返済はすべて給与から補填せざるを得なかった。
1年目の収支を計算すると、以下のようになった。
- 家賃収入(5ヶ月分のみ):約32.5万円
- ローン返済(年間):約48万円
- 管理費・修繕積立金(年間):約18万円
- 固定資産税・都市計画税:約7万円
- 退去時の原状回復費:約15万円
- 管理会社への委託料:約3万円
差し引きすると、年間の手残りはマイナス58.5万円。実質利回りに換算するとわずか2.6%どころかマイナスという結果だった。駅から遠い立地が災いし、空室期間が長期化したことが最大の打撃となった。
見落としがちな5つの経費
経費1:管理費・修繕積立金の値上がり
区分マンションの場合、毎月の管理費と修繕積立金は避けられない。築年数が浅いうちは月額1万〜1.5万円程度だが、築15年を超えると大規模修繕に備えて値上がりするケースが多い。国土交通省の調査によれば、修繕積立金の平均額は築5年で月額約6,500円だが、築20年では月額約12,000円と約1.8倍に上昇する。
表面利回りの計算にはこの費用が含まれていないため、実際の手残りは想定より大幅に少なくなる。
経費2:空室リスクと募集コスト
表面利回りは「年間を通じて満室」を前提としている。しかし現実には、入居者の退去は必ず発生する。総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国の賃貸住宅の空室率は約18.7%(2023年時点)に達している。
さらに、新たな入居者を募集する際には広告料(AD)として家賃の1〜2ヶ月分を不動産仲介会社に支払うのが一般的だ。この費用も表面利回りには含まれていない。
経費3:原状回復・設備更新費用
入居者が退去するたびに原状回復工事が必要になる。壁紙の張り替え、ハウスクリーニング、設備の補修などで、ワンルームでも1回あたり10〜20万円はかかる。さらに、エアコンや給湯器などの設備は10〜15年で交換時期を迎え、1台あたり10〜30万円の費用が発生する。
経費4:固定資産税・都市計画税
不動産を所有している限り、毎年かかる税金がある。固定資産税は評価額の1.4%、都市計画税は最大0.3%が標準税率だ。1,000万円の物件であれば、年間7〜10万円程度が目安となる。意外と大きな金額だが、初心者はこの経費を見落とすことが多い。
経費5:ローン金利の変動リスク
変動金利でローンを組んでいる場合、金利上昇により返済額が増加するリスクがある。2024年以降、日銀の金融政策の転換により長期金利は上昇傾向にある。金利が1%上昇すると、2,000万円のローンで年間返済額は約20万円増加する。これだけで表面利回りが1%以上下がる計算だ。
正しい実質利回りの計算方法
実質利回りは、以下の式で計算する。
実質利回り =(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100
年間経費に含めるべき項目は以下の通りだ。
- 管理費・修繕積立金
- 管理委託料(家賃の3〜5%が相場)
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険・地震保険料
- 空室期間の想定損失(年間家賃の5〜15%)
- 原状回復費の按分(退去頻度に応じて年間按分)
- 設備更新費の按分
購入時諸費用には、仲介手数料、登記費用、不動産取得税、ローン事務手数料などが含まれ、物件価格の7〜10%が目安となる。
先ほどの1,000万円の物件を例に正しく計算すると、表面利回り7.8%の物件でも、実質利回りは3〜4%程度になることが多い。空室が長引けばさらに低下する。
利回りの数字に騙されないために
表面利回りはあくまで「入口」の指標に過ぎない。物件を比較する際の最初のフィルターとしては有用だが、投資判断の最終的な根拠にしてはいけない。
重要なのは、すべての経費を織り込んだ実質利回りと、さらに空室リスクや金利変動を加味した最悪ケースのシミュレーションを行うことだ。知人の投資家の中には、物件ごとにExcelで30年分のキャッシュフロー表を作成し、金利が1%上がった場合、空室が3ヶ月続いた場合など複数のシナリオを検証してから購入判断をしている人もいる。
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